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更新日:2023/05/04
2回続きました祖父の謎の言葉シリーズ、2度あることは3回目です。今回は大作なので複数回の連載に及びます。めげずに最後までご愛読ください。
「富三郎さんは、気のどくだった。」生前祖父は呟いていましたが、言葉の真理に気づいたのは亡くなって10年以上経ってからでした。富三郎さんとは、もちろんトーマス・グラバーの息子の倉場富三郎さんです。(16話参照)
さて、前回までの話でいくつかの疑問を持たれた方も多いと思います。
1 イギリスの商社であるグラバー商会と、デンマークの商社である大北電信はどういう関係なのか?
2 そもそも、デンマークの商社がなぜ英語を使うのか?
3 もっと言えば、なぜ開国と同時に進出した諸外国の筆頭がイギリスなのか?
この疑問の答えは、当時の世界事情にあります。19世紀半ば世界の覇権を握っていたのは、アメリカでも中国でもなく、イギリスでした。それはなぜか?イギリスが世紀の大発明と改革を連発したからです。大航海時代にイギリスは多くの国を植民地とし、フランスとの戦争にも勝って国力を上げました。そして、綿織物による農業革命、蒸気機関による産業革命、それに続く技術革命で世界第一等国の地位を不動のものとしました。当然、世界中から人とお金がイギリスに集中します。ここでポイントとなるのはお金です。
現在流通している貨幣(最近は電子マネーに変わりつつありますが。)の始まりは、イギリスのロスチャイルド家と言われています。物流が進む中、当初通貨の役割を果たしていたのは「金(ゴールド)」でした。ところが、「金」は重くて嵩張ります。保管とセキュリティーも悩みの種でした。ここに目を付けたのが、ロスチャイルド家でした。頑丈でセキュリティー万全の巨大金庫作って「金」を預かり、預かり証を発行したのです。この「金」の預かり証が、紙幣の始まりと言われています。
国力が上がるにつれて、ロスチャイルド家の「金」の保管量も倍増し、預かり証の信頼も揺るがぬものとなりました。預かった「金」を元手に国や貴族、商人に金を貸し、預けた方には利子を払う、そうです、銀行の仕組みを創り出したのです。創業者のドイツ系ユダヤ人マイアー・アムシェル・ロートシルト(英語ではロスチャイルド)は、ロスチャイルド銀行の紙幣を国の通貨とすることに成功し、フランスやドイツ、イタリアのど各国で同様の銀行を立ち上げました。5人の息子たちは銀行業と同時に鉄道や郵便事業、武器を含む各種産業を手掛け、ロスチャイルド財団が確立したのでした。
どうですか、冒頭の3つの疑問が解けたのではないでしょうか。グラバー商会も大北電信もロスチャイルド・グループの一員としてつながっていたのでした。世界最強グループに属し、順風満帆の倉場富三郎さんや祖父の人生にこの後何が起こるのか。次回、乞うご期待。
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