第9話「ロシア・シリーズ-白系ロシアの話-」

更新日:2022/09/03

 某国刺客からの毒殺や爆殺に怯えながらも、しぶとく続いている「ロシア・シリーズ」、今回は何と「白系ロシア」の話です。タイトルを見て色白のロシア美人を思い浮かべた方、まだまだですね。煩悩と闘いながらご覧ください。

 

 今ではほとんど使われることがないこの言葉は、1900年代初頭に海外亡命をしたロシア人を指します。社会主義国家(赤)に進み出した祖国に見切りをつけた貴族や資産家、芸術家を(白)系と表したのでした。

 当時、南山手にはロシア領事館があったため、伝手を使って多くの白系ロシアが移り住んできました。財力に加えて教養もあった彼らは英語が話せ、イギリス人から洋館を買い取りました。こうして大戦前までの間、南山手はミニミニロシア人居留地となったのでした。雪と氷に閉ざされた祖国からしたら、温暖な長崎はリゾート地だったのかもしれませんね。

 南山手で生まれ育った叔母は祖父の仕事の関係で幼少の頃から英語が堪能でした。「近所にターニャって陽気なロシアの子がいてよく遊んだのよ。」と言っていたのを思い出します。資産家の娘で英語を話せる陽気なターニャが、革命や戦乱を乗り切り無事に祖国に帰れたことを祈ります。

 

 先日、ロシア国内で政府の弾圧に負けず、ウクライナ進攻の真実を伝えようと奮闘するテレビ局の特集があっていました。国が間違った方向に進んでいても、そこに暮らす人が全て悪いわけではありません。心あるロシア人に声援を送りたいと思います。しかし、このまま戦争が長引けば国に嫌気がさして亡命する現代版白系ロシアが増えるかもしれませんね。

 

 おっと、また某国を敵に回してしまいました。「ロシア・シリーズ」命がいくつあっても足りませんな。と言うことで次回は感動のシリーズ最終話です。乞うご期待。

「我が家の前を歩くロシア人親子(1930頃)」

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