第14話「南山手に雪がふる」

更新日:2023/02/04

 大寒は過ぎましたが、まだまだ厳しい冷え込みが続いています。今回は、南山手の冬の話です。

 

 全国推定80万人(あくまで推定です。過大広告ではありません。)の読者の皆様は、九州と聞くと暖かい南国のイメージがあると思います。確かに長崎は温暖です、と言うより年中暑くて寒さとは縁遠い町です。ところが、近年、地球温暖化で気流が変わったのか、毎年大雪が降るようになりました。特に先月の十年に一度の寒波では、全国ニュースになるほどの事態でした。県内各所で積雪による交通事故や渋滞がおき、南山手でも5㎝の積雪が記録されました。

 雪の被害を受けたのは車だけではありません。ご存じのとおり長崎は坂の町です。住宅も大部分が斜面に建っていて、車が入れない坂道や階段が多数あります。南山手も石畳の坂と、延々と続く階段に網羅されています。さあ、ここに雪が積もるとどうなるでしょう。

 そうです。雪に慣れていない住民は七転八倒、坂道を滑落する悲劇に見舞われます。我が家の横も傾斜がきつい石畳の坂なのですが、雪の日にはおじいさんが転倒してスーっと滑り落ちて行きます。おばさんもスー、学生さんもスー、しまいには猫までスー、場数を踏んだおばあさんは最初から座り込んでスーっと世も末みたいなことになります。でも、大丈夫。坂道の下には馬渡外科が暖かく待ち構えています。

 

 さて、県内在住の読者の皆さんはニュースで南山手の地名を再三ご覧になったことと思います。積雪記録のテロップには「長崎市南山手」との表示が流れていました。実はニュースになるのは雪だけではありません。最大瞬間風速、最大降水量、最高気温まで全て南山手です。南山手が観光地と言うのは真っ赤な嘘で、本当は寒暑の差が厳しく、強風が吹きすさぶ劣悪な豪雪地域なのでしょうか。

 この謎の答えは「長崎地方気象台」です。1947年、居留地時代にロシア領事館があった土地に「長崎海洋気象台」が建てられました。(1878年創設の「長崎観測所」が移転し名称も変更、2013年組織改編により現名称)そのため、気象に関する報道には南山手の地名が入るのでした。決して荒野の荒れ地みたいな所ではありませんので、安心していらしてください。

 

  「雪に埋もれる石畳の坂道」

 

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