第42話 「版画家 田川 憲の話③ ―カルノー商会―」

更新日:2025/05/31

 梅雨の季節となりましたが、過ごしやすい天気が続いています。いつまでもこのままならいいのですが、今年の夏も暑くなりそうですね。それでは、田川 憲シリーズ3回目です。

 

 「夾竹桃館」探しはのっけから難航しました。メルカリもヤフオクもない時代だったので知り合いの画商(24話参照)を頼りましたが、「夾竹桃館」はおろか田川 憲の作品自体全く見つかりません。途方に暮れていたところ、在郷画家作品コレクターの垣内司郎さんから「骨董屋を回れ。」の金言をいただきました。おまけに「夾竹桃館じゃないが、中島川沿いの温故堂で1枚押さえている。」との有難い話まで。光速ですっ飛んで行って言い値で買い取りました。こうして手に入れた初の田川 憲作品が「旧カルノー商会うら」でした。

 

 カルノー商会は居留地時代に東山手にあった洋酒などを扱うイギリス系商社です。このカルノー商会を裏側からとらえた作品は、雰囲気がある洋館と石畳の坂道の構図が絶妙で、シックな色合いも見事なものです。さすがに年代物なので状態は良好とは言えませんでしたが、サインとエディッションナンバー(「5/30」等で表記、摺った順番/作品総数)が記され落款と「自刻自摺」の印も押されていました。紛うことなき本物です。版画は基底材が紙なので湿度と日光が弱点です。これ以上焼けが進まないように、UVカットアクリルを入れた額装を施しました。

 それからというもの地道に骨董品店を回りました。しかし、出物は2年に1点あればいい方、コレクションは2点で止まり、「夾竹桃館」は遥か彼方です。折れかけていた時に意外な方から面白い話を耳にしました。(つづく)

 

 

      「旧カルノー商会うら」(1958年)

 

<追記>

 先日、田川憲のお孫さんの田川俊さんから連絡がありました。小部屋を見ているとの事、正にタイムリーでした。町並み保存会との交流も深まりそうです。俊さんは田川憲のギャラリーを経営しています。田川グッズも多数取り揃えているので、足を運んでみてください。

■アートギャラリーSoubi’56■

住所:長崎市出島町10-15日新ビル106
電話:095-895-7818
E-mail:tagawa921@kca.biglobe.ne.jp
開館時間:11:00~18:00
金・土・日のみOPEN(イベント参加のため休館の場合もあり)

 

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