第5話「南山手怪奇シリーズー南山手・魔物耐性事情ー」

更新日:2022/05/01

 一部マニアの間で好評を博している「南山手怪奇シリーズ」、いよいよ大団円です。待望の第3作は「南山手・魔物耐性事情」です。何かよくわからないタイトルですが、今回も心臓が凍りつくような怪奇譚です。どうぞご堪能ください。

 

 子どもの頃、「南山手の洋館に住んでいる子どもはお化けに強いらしい」との噂がありました。これは、真実です。当事者の私が言うので間違いありません。では、何故そうなったのか。勘のいい読者の皆様がお気づきのとおり、リアルお化け屋敷で暮らしていたからです。

 夜中にトイレに行こうとすると、高い天井からはドラキュラ伯爵がぶら下がり(壁の染み)、長い廊下にはフランケンシュタインの足音が響き渡り(床の軋み)、はたまた庭からは魔犬ケルベロスと狼男の唸り声が聞こえる(番犬と猫の声)、そんな日常で鍛えられた洋館の子どもたちは、いつしか魔物に対する恐るべき耐性を身に着けたのでした。

 お陰様で、お化け屋敷で怖い思いをしたことは一度もありません。昔は「おくんち」(長崎諏訪神社の秋の大祭、龍踊をはじめとする奉納踊りで有名)の出店で、毎年、大波止にお化け屋敷が出ていました。魔物に耐性がない子どもたちの絶叫がこだまする中、薄暗い通路を颯爽と進み、お化け役の方に労いの声をかけ、腰を抜かして迷走するお客を一列に並ばせて出口まで先導する、立派な子どもへと成長したのでした。(お化け屋敷にしてみれば、営業妨害すれすれのたちの悪い客だったと思います。)もちろん年頃には、意中の彼女をお化け屋敷に誘い幸せな青春時代を過ごしたのでした。めでたしめでたし。

 

 如何でしたでしょうか、3回にわたってお届けした「南山手怪奇シリーズ」。恐怖を堪能されたことと思いますが、一応今回で幕とさせていただきます。まだまだネタはありますので、皆様からの熱狂的な要望がありましたら続編を掲載いたします。それでは、しばしご機嫌よう。

「縁日のお化け屋敷(昭和50年代)」

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