第26話「雪の話」

更新日:2024/02/02

 ここ数日は穏やかな日差しですが、流石に大寒、まだまだ身も凍るような日々が続きそうです。さて、今回は文化財課お墨付きの団体らしく文学の話です。趣味と教養を高める内容ですので、暫しおつき合いください。

 

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ

 

 僅か2行の短い文ですが、情景が目に浮かぶ見事な詩ですね。さあ、誰の詩でしょう。

 三好達治の「雪」と早押しで正解した方、かなりの文学通です。正解は逃したものの、目にしたことがある方は結構多いのではないでしょうか。かつて教科書にも載ったことがあるこの詩は、わかりやすい語句と短文の繰り返し、短歌の流れを汲む韻を踏んだ表現で多くの人々の心に響きました。

 本来詩は自由に解釈するものなので、解説は蛇足と言われそうですが、中身を見ていきましょう。季節はもちろん冬、場所は雪深い地方でしょうか。太郎と次郎は子どもを表す代名詞として使われているようで、「眠らせ」ていることから幼い子どもだとわかります。赤子を寝かしつけて静かになった家々の屋根に、深々と雪が降り積もる、そんな情景を表しているようです。赤子の泣き声と一面の静寂、暖かい家の中と厳寒の屋外、対比も見事な作品ですね。個人的には、世界遺産となった岐阜県白川郷の合掌造りの家々が舞台だと勝手に想像しています。

 作者の三好達治は、1900年(明治33年)に大阪市で生まれました。(なんとうちの祖父と同い年です。)「雪」は1930年に出版された詩集「測量船」の中の一遍でした。

 

 温暖な長崎にも、時折思い出したように雪が降り積もります。雪景色の南山手を散策しながら「雪」を口ずさむのも風情があるかもしれません。

 

        「白川郷五箇山」(フリー素材)

 

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