第27話「長崎名物 皿うどんの話」

更新日:2024/03/02

 三寒四温の日々となりました。まだまだ寒い日は続きましますが、先月は中国の正月を祝うランタン・フェスティバルで長崎の町は賑わいました。足を運ばれた方も多かったと思います。さて、今回は長崎名物の話です。

 

 長崎名物は多数ありますが、「食」と言えば中華料理を外すことはできません。鎖国時代から交流があったオランダと中国、様々な文化が長崎に受け入れられましたが、食文化は圧倒的に中国でした。同じ東アジアで食材に馴染みもあり、開国後に多くの「華僑」と呼ばれる中国人(台湾人)が住み着いたことも要因だと考えられます。横浜、神戸、長崎の中国人居留地は後に中華街と呼ばれ、華僑の方々による中華料理店が軒を並べることとなったのでした。

 長崎の中華街は「新地」と呼ばれています。新地と隣接する「館内(町)」が開国時の中国人居留地でした。この館内で1899年に陳平順さんが創業した中華料理店が「四海楼(しかいろう)」です。中国から身一つで長崎に渡ってきた陳さんは、苦労に苦労を重ねて資金を貯め、中華街一大きな四海楼を開店しました。本格的な中華料理が評判になり店は大繁盛する中、陳さんが気に病んだのは中国から渡ってきた貧しい若者たちでした。苦労人だった陳さん、食べられない苦しさをよく知っています。安価で栄養がある料理を食べさせてやりたい、この思いが、ボリュームある太麺と豚骨スープの上に残り物の食材を乗せた「ちゃんぽん」を生み出したのです。賄い食的に提供されていたこの料理は、やがて評判となり四海楼の、そして長崎を代表する名物料理となりました。それでは問題です。「ちゃんぽん」と並ぶ長崎の名物中華料理は何でしょう?(地元の皆さんは回答を控えましょう。)「皿うどん」と自信満々で答えた方、あまりに簡単だったので景品はありません。

 

 この「皿うどん」、ご存じの方も多いと思いますが、ちゃんぽんと同じ具材にとろみをつけた餡を混ぜ、麺の上に乗せた料理です。平たく言うと汁なしちゃんぽんのようなものですね。ところで、皿うどんの麺は2種類あることはご存じでしたでしょうか?一般的に普及しているのは「バリバリ」と呼ばれる揚げた細麺です。独特の食感が人気で、皿うどん=細麺と思っている方も多いと思いますが、実はちゃんぽんとほぼ同じ麺を使った「太麺」があります。好みが分かれるところですが、我が家はマイナーな太麺派です。と言うのも陳平順さんの息子と同級生だった祖父が頼む中華料理は、四海楼の「太麺皿うどん」一択だったからです。配達エリア外でしたが、いつも陳さんは熱々の皿うどんを出前してくれました。若き日の祖父と陳さんに、心温まるエピソードがあったに違いないと思い聞いてみると、何と、「細麺は歯に詰まる。」と言う情けない理由だった事は内緒です。

 

 「四海楼」は大浦天主堂の下に移転し、連日観光客で賑わっています。名物のちゃんぽんと皿うどんも絶品です。立ち寄られた際は是非「太麺皿うどん」を味わってください。

 

        創業当時の四海楼(四海楼HP)

 

           四海楼の「太麺皿うどん」

 

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