第40話 「田川 憲の話①―東の棟方・西の田川―」

更新日:2025/04/04

 春の訪れを感じさせる季節となりました。花見の二日酔いにも負けず皆様ご健勝のことと思います。さて、今回からは私が尊敬する長崎が生んだ版画家の話です。情操が豊かになる話なのでゆっくりご覧ください。

 

 皆さんは「田川 憲」をご存じでしょうか?美術関係者で知らなければモグリですが、一般にはあまり知られていないかもしれません。活躍したのは戦前・戦後、亡くなって既に50年以上経ちます。しかし、名前は知らなくても絵を見たことがある方は多いはずです。長崎の老舗菓子店「梅月堂」のパッケージも田川 憲の作品です。

 田川 憲は1906年長崎市に生まれ、1967年に没するまで長崎の風景を描き続けました。作品の多くは木版画で「東の棟方(志功)・西の田川」と評されるほどでした。モチーフは異国情緒あふれる洋館や唐寺で、特に居留地で朽ち果てて行く洋館への想いが強く、取り壊される前に作品として残しました。

 

 田川 憲の弟子で在郷版画家として活躍した梶川清彦さんに話を聞く機会がありました。師匠の田川 憲の版画は、浮世絵から続く日本伝統の版画技法「輪郭法」という技法で、建物などの境界を黒色の線で表し、それぞれの色の版を重ねて表現しているとの事でした。浮世絵は絵師、彫師、摺師と分業制でしたが、田川 憲をはじめとする木版画家は全工程を一人でします。自刻自摺と言われるこのスタイルは肩を酷使するため、早晩引退する方が多いそうです。田川 憲は61歳で早逝していますが、肩はボロボロだったに違いありません。しかし、無理を強いて残した作品は、素晴らしいものばかりです。

 どの作品も見事ですが特に思い入れがある作品があります。それは・・(つづく)

 

 

パッケージに使われた「西洋骨董店にて」

 

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