第37話 「銀座で豪遊(しかも接待)」の話

更新日:2025/01/03

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

新年第1弾は凄いタイトルですね。私の身に何が起こるのか、胸躍らせてお読みください。

 

 前回話しました長~い名前の「長崎市伝統的建造物群保存地区保護審議会(以下 伝建審)」とは何だ?との問い合わせが全国から推定300件ほど寄せられたので解説しましょう。伝建審は市内の歴史的建造物の保存・修復・形状変更について審議する機関です。審議員は18人、構成は大学教授等専門職が11人、関係団体の代表が7人、これに事務局の文化財課4人が加わります。結構、権威がありここを通過しないと変更はおろか工事に着工もできません。近年ではグラバー住宅や旧イギリス領事館の復元も審議しました。当然、前出のマリア園も俎上にあがったのでした。

 行政的な堅苦しい話はさておき、ここからが銀座の話です。時はさること6年前、東京赤坂の森ビル本社に私はいました。森トラストの申請に対する伝建審の過酷な提案を伝えるためです。参加メンバーは森トラスト側が増永取締役を筆頭に大貫禄の幹部10余人、対する伝建審は5人、まさに多勢に無勢です。しかも私と文化財課の新人は戦力外、しかし、残りの3人が強力でした。東京大学・腰原幹雄 教授(体も声も大きく山下達郎ばりのバリトン)、元文化庁調査官で東京家政大学・大橋竜太 教授(中尾彬ばりの強面でさらにバリトン)、同じく元文化庁調査官で国土交通省・長谷川直司 研究官(フレンドリーな穏健派で唯一普通の声)、この3人がやってくれました。森トラスト側に莫大な費用と手間を強いる工事の提案を承諾させてしまったのです。

 18時から始まった会議は2時間で手打ちとなり、時刻はナイスな20時、この時間設定、更に場所は銀座と目と鼻の先の赤坂、招待したのは天下の森ビル・グループ、これは来るな、絶対来るな「憧れの銀座の接待」フッフッフッ

 ・・・・待ちました、鼻の下を床まで伸ばして待ちました。待つこと数10分、「それでは、ご都合もあるかと思いますので閉会いたします。お気をつけてお帰りください。」進行役の追い立てるような挨拶であっけなく終了したのでした。うなだれて森ビルを出ようとしていたら、後ろから声がかかりました。「髙木さん、この後どうするの。一緒に行かない。」遂に来たかと喜ぶ場面なのでしょうが、声は低いバリトン。そうです、山下達郎と中尾彬でした。実は伝建審の仲良しから「あの二人と飲みに行ったら、肝臓が逝きますよ。おまけに安くて小汚い店好きです。」との情報を仕入れていたので、文化財課の新人を生贄にしてそそくさと逃げ出しました。こうして「銀座で豪遊(しかも接待)」計画は頓挫したのでした。ちなみに生贄は、ガード下の小汚い飲み屋に深夜まで監禁されたらしいです。合掌

 

 と言うことで4年目に入った会長の小部屋、今年もご愛読のほどよろしくお願いします。

 

「銀座の高級クラブ」※悲しいことに画像はイメージです

 

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